Exchange Online移行の注意点とLINE WORKSからTeamsへの判断|Microsoft 365 Copilot導入前チェックリストARTICLE
ARTICLEM365 Copilot導入
※ Microsoft 365 Copilot は、2026年8月から「Microsoft Copilot」に名称が変わりました(Copilot Chat は「Microsoft Copilot Chat」)。移行期間中は旧名称も併用されているため、本記事では広く使われている「Microsoft 365 Copilot」の表記で統一しています(出典:Microsoft Learn「Microsoft Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」)。
「Copilot を入れるなら、メールも Microsoft 365 に移さないといけないのか」「LINE WORKS で回っている現場のやりとりを、Teams に変えて大丈夫なのか」——Microsoft 365 Copilot の導入を検討し始めた非IT企業の方から、必ずと言っていいほど出てくる質問です。
メールはレンタルサーバー、チャットは LINE WORKS、という組み合わせは、現場ではうまく回っています。社員も慣れています。それを変えるには、移行作業そのものより「慣れた道具を手放す」ことへの抵抗のほうが大きいかもしれません。一方で、メールとチャットが Microsoft 365 の外にある限り、Copilot は社内のやりとりを材料にできません。
本記事は第2回(前編):Microsoft 365 Copilotは社内のメールやチャットを「学習」するのかの続きです。前編ではCopilotが参照できるデータの条件と、ファイルの置き場所(Box・SharePoint・OneDrive)の判断を扱いました。後編では、前編の末尾で予告したとおり、メールの移行、チャットの移行判断、ライセンスの前提を整理し、最後に導入前チェックリストにまとめます。
この記事の要点
- Copilot が Outlook で社内のメールを扱えるのは、メールボックスが Exchange Online にあるときです。移行方式は、今のメール環境(IMAP・POP・Exchange Server)で決まります
- すでに Google Workspace(会社の Gmail・Google ドライブ)を使っている会社は、Copilot のためだけに Microsoft 365 へ移る必要はありません。Google Workspace のまま Gemini を使うほうが自然です
- LINE WORKS から Teams への移行は「全部移す」か「残す」かの二択ではありません。社内のやりとりは Teams、LINE でつながる社外とのやりとりは LINE WORKS、という併用も現実的な選択肢です
- 導入前チェックリストは、ファイル/メール・チャット/アカウント・ライセンス/体制・ルールの4ブロックで確認し、×が残った項目は後続の回の作業に対応づけます
CopilotがOutlookで効く条件 ― メールは「Exchange Online」にあるか
前編で整理したとおり、Copilot は「質問した本人が閲覧権限を持つ、Microsoft 365 の中のデータ」を参照します。メールについて言えば、メールボックスが Exchange Online にあることが条件です。
Microsoft の要件でも、Copilot は Exchange Online でホストされているプライマリメールボックスをサポートし、あわせてユーザーのアーカイブメールボックスや、アクセス権を持つ共有メールボックス・代理人のメールボックスでも使えると説明されています(出典:Microsoft Learn「Microsoft Copilot 管理者のアプリとネットワークの要件」)。
逆に言えば、次の状態では Copilot はメールを材料にできません。
- レンタルサーバーのメールを、Thunderbird や Outlook などのメールソフトで POP 受信し、PCに溜めている
- Gmail(Google Workspace)でメールを運用している
- 会社で Microsoft 365 を契約しているが、メールだけは別のサーバーのまま
Copilot の価値の大きな部分は、「この取引先と先月どんなやりとりをしたか」「このメールスレッドの論点は何か」を、Outlook の中で即座に引き出せることにあります。メールが Microsoft 365 の外にあるままライセンスを配ると、「思ったより答えてくれない」という不満の原因になります。
Exchange Online移行の方式 ― 今のメール環境で決まる
Exchange Online への移行方式は、今のメールがどこにあり、どう受信しているかで決まります。非IT企業でよく見る環境は、次の4つです。
| 今のメール環境 | 主な移行方式 | 移るもの | 注意点 |
|---|---|---|---|
| レンタルサーバー(IMAP で読める) | IMAP 移行 | メールのみ | 連絡先・予定表・タスクは移らない |
| レンタルサーバー(POP で受信し PC に保存) | PST インポート | PC に保存されたメール | サーバー側にメールが残っていないことが多い |
| Google Workspace(会社の Gmail) | 原則として移行しない(移る場合は Google Workspace 移行) | メール・ルール・予定表・連絡先 | 下の節を参照。Copilot のためだけに移るメリットは小さい |
| 社内の Exchange Server | カットオーバー移行/ハイブリッド移行など | メール・予定表・連絡先 | バージョンと規模で方式を選ぶ |
移行方式の全体像は、Microsoft の「複数のメール アカウントを Microsoft 365 に移行する方法」にまとまっています。以下、非IT企業に多い上の3つを詳しく見ます。
レンタルサーバーのメール(IMAP)の移行
レンタルサーバーのメールが IMAP で読める場合は、Exchange 管理センターから IMAP 移行を使います。Microsoft のドキュメントに書かれている主な制約は次のとおりです(出典:Microsoft Learn「IMAP メールボックスの移行について知っておくべきこと」)。
- 移行できるのは受信トレイなどのメールフォルダーの中身だけで、連絡先・予定表・タスクは移りません
- 1ユーザーのメールボックスから移行できるのは最大 50万アイテムで、新しいメールから順に移ります
- 移行できるメール1通の最大サイズは 35MB です
- IMAP 移行は Microsoft 365 側にメールボックスを作りません。先にユーザーを作り、ライセンスを割り当ててから移行します
- 移行には、各メールボックスのパスワードか、管理者として各メールボックスにアクセスできる資格情報が必要です
作業の流れは、ユーザーの作成 → 移行元の情報の確認 → 移行バッチの実行 → MX レコードの切り替え → 同期の停止、です。MX レコードとは、「このドメイン宛てのメールをどのサーバーに届けるか」を示す DNS の設定で、これを Microsoft 365 に向け直した時点から新着メールが Exchange Online に届き始めます。移行バッチを削除するまでは移行元との同期が続くため、切り替え前後に届いたメールも拾えます。
連絡先(アドレス帳)が移らない点は、見落とされがちです。取引先のアドレスをメールソフトのアドレス帳に頼っている会社では、書き出しと取り込みを別の作業として計画に入れます。
PCに溜めたメール(POP)の移行
長年レンタルサーバーを使ってきた会社で最も多いのが、POP で受信し、メールソフトの中にだけメールが残っている状態です。POP は受信したメールを PC に取り込む方式で、設定によってはサーバーからメールが消えます。この場合、サーバーから取り込む IMAP 移行では過去のメールを拾えません。
PC に残っているメールを移すには、メールデータを PST 形式(Outlook のデータファイル形式)で用意し、取り込みます。
- 管理者がまとめて取り込む——Microsoft Purview の PST インポートで、ネットワーク経由でアップロードした PST ファイルを各メールボックスに取り込みます。インポートの速度の目安は1日あたり約 24GB(保証値ではありません)、PST ファイルは 20GB 以下に分けることが推奨されています(出典:Microsoft Learn「組織の PST ファイルのインポートに関する詳細」)
- ユーザーが自分で取り込む——人数が少なければ、各自が Outlook の「インポート」機能で PST ファイルを取り込むこともできます
Outlook 以外のメールソフトを使っている場合、PST 形式に変換する手間が加わります。社員ごとにメールソフトや保存状況がばらばらなことも多いため、まず全員の受信方式と保存場所を調べるところから始めます。
Google Workspace(Gmail)を使っている会社は、移らなくてよい
会社ですでに Google Workspace を使っている場合、Copilot を使うためだけに Microsoft 365 へ移るメリットは小さいと考えています。
- Google Workspace には、メール(Gmail)だけでなく、ファイル(Google ドライブ)、文書・表計算(ドキュメント・スプレッドシート)、予定表、会議(Meet)までそろっています。メールだけを Exchange Online に移すと、ファイルは Google ドライブ、メールは Outlook という二重運用になり、Copilot が参照できる範囲も中途半端になります
- 全部を移すなら、ファイルの移行、権限の作り直し、社員の操作の慣れ直しまで含めた大きなプロジェクトになります。その負担に見合うだけの理由が、Copilot だけで立つことはまれです
- Google Workspace には、同じように社内のメールやファイルを材料にする生成AI(Gemini)が組み込まれています。すでに Google Workspace で仕事が回っているなら、Google Workspace のまま Gemini を使うほうが自然です
Microsoft 365 への移行を検討するのは、たとえば次のようなCopilot 以外の理由があるときです。
- Excel のマクロや、Word・PowerPoint の書式を前提にした取引先とのやりとりが多い
- 取引先や親会社が Teams を使っていて、会議やチャットをそちらに合わせる必要がある
- 会計や基幹システムなど、使っている業務システムが Microsoft 365 との連携を前提にしている
それでも移る場合は、Google Workspace 移行を使います。IMAP 移行と違い、メールに加えて予定表と連絡先も移せます(出典:Microsoft Learn「Google Workspace から Microsoft 365 への移行を実行する」)。ただし、次の点に注意が必要です。
- Gmail のフィルタ(振り分けルール)は移行されますが、既定では無効の状態で移ります。ユーザーが内容を確認してから有効にします
- 休暇時の自動応答の設定、会議室の予約、共有カレンダーなどは移りません
- 事前準備として、Google 側でのプロジェクト作成の権限、メールを振り分けるためのサブドメインの作成、Microsoft 365 側でのユーザーの準備が必要です
移行判断の本当の論点は、メールよりもドキュメントやスプレッドシートを Google ドライブでどう使っているかです。ファイルの置き場所の考え方は、前編の SharePoint・OneDrive の節を参照してください。
過去のメールは移すか、参照だけにするか
移行方式と並んで決めておくべきなのが、過去のメールをどこまで移すかです。選択肢は3つあります。
| 選択肢 | 内容 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 全部移す | 保存されている過去メールをすべて Exchange Online に移す | 過去の経緯を Copilot に引き出させたい。容量と作業時間に余裕がある |
| 期間を区切って移す | 直近の数年分だけを移し、それ以前は別途保管する | ほとんどの会社。取引の継続期間に合わせて線を引く |
| 移さない | 新しいメールから Exchange Online で受け、過去分は旧環境や保管ファイルで参照する | 旧環境を当面残せる。過去メールを業務で参照することが少ない |
判断の軸は、Copilot に引き出させたい「過去の経緯」がどこまで遡るかです。前編で扱ったとおり、Copilot が参照できるのは Microsoft 365 の中にあるデータだけです。「3年前の見積のやりとりを踏まえて回答してほしい」なら、その3年分は移す必要があります。
一方で、10年以上前のメールを全員分移しても、日常業務で参照されることはまれです。移行の作業時間と、移行後に「見えてはいけない古いメールが共有メールボックス経由で見える」といったリスクを考えると、期間を区切るのが現実的な落としどころになることが多いのが実感です。
なお、移行中にメールボックス側でメールの自動削除やアーカイブのポリシー(MRM・アーカイブポリシー)が動いていると、移行ツールがそのメールを「見つからない」と報告し、実際には失われていないのにデータが欠けたように見えることがあります。Microsoft は、データ移行の前にこうしたポリシーをすべて無効にすることを強く推奨しています(出典:前掲の IMAP 移行・Google Workspace 移行のドキュメント)。
Exchange Online移行の注意点 ― MX切替日・共有アドレス・並行運用
移行作業で実際にトラブルになりやすいのは、技術的な手順より段取りと周知です。全体の流れは次のようになります。
MX切替日を先に決める
MX レコードを切り替えた日が、実質的な「移行日」です。この日を境に、新着メールの届く先が変わります。次の点を踏まえて日付を決めます。
- 繁忙期・締め日を避ける——請求書や受発注のメールが集中する時期に切り替えない
- DNS の反映には時間がかかる——切り替え直後は、旧サーバーと Exchange Online の両方にメールが届く時間帯があります。移行バッチによる同期は、この取りこぼしを防ぐためにしばらく残しておきます
- ドメインの管理者を確認する——DNS を管理しているのが、レンタルサーバー会社なのか、ドメイン登録業者なのか、以前ホームページを作った制作会社なのかを事前に確認します。ここが分からずに移行が止まるケースは少なくありません
共有アドレス(info@ など)を設計する
info@ や sales@ のように複数人で使っているアドレスは、Exchange Online では共有メールボックスにするのが基本です。共有メールボックスは、50GB まではライセンスを割り当てずに作成でき、アクセスする各ユーザーが自分のライセンスで利用します。共有メールボックスのアカウントで直接サインインする使い方は想定されておらず、サインインはブロックしておくよう案内されています(出典:Microsoft Learn「Microsoft 365 の共有メールボックスについて」)。
非IT企業でよくあるのが、info@ のパスワードを複数人で共有してメールソフトに設定している運用です。移行を機に、誰がそのアドレスのメールを読めるのかをメンバーの割り当てで管理する形に変えます。これは、Copilot が「アクセス権を持つ共有メールボックス」を参照できることとも関係します。共有メールボックスのメンバーを広げすぎると、Copilot 経由でその中身が多くの人の回答に出てくることになります。
並行運用の期間とルールを決める
切り替え後しばらくは、旧環境に残ったメールを確認したい場面が出てきます。旧環境の契約をすぐに解約せず、閲覧用として一定期間残すのが安全です。そのうえで、次のルールを日付つきで周知します。
- ○月○日以降の新着メールは Outlook(Exchange Online)で受ける
- 旧環境は○月○日まで閲覧のみ。旧環境から返信しない
- 旧環境の解約日と、それまでに各自が確認しておくこと
メーラーが変わる影響 ― Outlookに変わると何が変わるか
移行で社員が最も戸惑うのは、メールの中身ではなくメールソフトが変わることです。Thunderbird や Becky! など、長年慣れたメールソフトから Outlook に変わると、次のような作り直しが発生します。
| 項目 | 何が起きるか | 対応 |
|---|---|---|
| 署名 | メールソフトに設定していた署名は引き継がれない | 会社で署名の書式を決め、配布する |
| 振り分けルール | メールソフトのフィルタはそのまま移らない | Outlook の仕分けルールとして作り直す。サーバー側で動くルールにしておけば、PC・スマホのどちらで見ても同じ振り分けになる |
| アドレス帳 | IMAP 移行では移らない | 書き出して取り込む。取引先の共通アドレスは共有の連絡先の持ち方を決める |
| ローカルフォルダー | PC にだけ保存したフォルダーは移行対象から漏れやすい | 移行前に、各自の保存場所を棚卸しする |
| スマホ | 旧サーバーの設定が残ったままになる | Outlook モバイルなどに設定し直す。旧設定は並行期間後に削除する |
| 操作感 | 画面構成や検索の仕方が変わる | 短い操作説明会と、よく聞かれる質問の一覧を用意する |
ここで大事なのは、移行の説明を「Copilot のため」だけで終わらせないことです。社員にとっては、慣れたメールソフトを手放す負担のほうが先に来ます。「スマホでも同じフォルダーが見える」「共有アドレスのパスワードを覚えなくてよくなる」「予定表と会議の招待がメールとつながる」など、日常の仕事で分かる利点を合わせて伝えるほうが、移行後の不満が少なくなります。
移行すると、Copilot でできるようになること(メール・Teams)
メールが Exchange Online に移り、Copilot のライセンスがあると、Outlook と Teams の中で次のことができるようになります。社員への説明では、こうした「移行してよかった」と感じられる使い方を一緒に見せると伝わりやすくなります(2026年9月時点)。
| やりたいこと | Copilot でできるか |
|---|---|
| Outlook でメールの下書き・返信文を作る | できます。「Copilot で下書き」を選んで指示すると、スレッドの内容を踏まえた下書きを作ります。トーンや長さの調整、送信前の添削(コーチング)も使えます。自分で呼び出して頼む形です(出典:Microsoft サポート「Outlook で Copilot を使用してメール メッセージを下書きする」) |
| 長いメールのやりとりを要約する | できます。スレッドの要点や、自分に求められている対応をまとめます |
| Teams のチャットの返信を整える | できます。書いた文を Copilot で書き直したり、トーンや長さを調整したりできます。チャットやチャネルの要約もできます(出典:Microsoft サポート「Microsoft Teams の Copilot を使用してメッセージを書き換え、調整する」) |
| 受信トレイを見て、返信が必要なメールを選び、まとめて下書きする | 先行提供中です。Outlook の Copilot がエージェントとして動く機能が、2026年4月27日から早期利用の Frontier プログラムで提供されています。「24時間返信がない相手に、丁寧な催促の下書きを作って」のように頼むと、対象のメールを選んで下書きまで作り、途中経過を見ながら確認・修正できます(出典:Microsoft Outlook Blog「Copilot in Outlook: New agentic experiences for email and calendar」) |
| 日程調整(空き時間から候補日を出し、決まったら招待を作る) | 頼めばできます。Copilot Chat に頼むとカレンダーから候補日を出し、候補入りの文面も作れます。日程が決まったら、Outlook のメールのやりとりから「Schedule with Copilot」で会議の招待を作れます。ただし、相手の返信を読んで自動で再提案・確定するところまではできません(出典:Microsoft Copilot Blog「Effortless scheduling with Copilot」) |
| メールが届いたら、頼まなくても自動で下書きしておく | 標準機能ではできません。Copilot Studio で「メールが届いたとき」を起点に動くエージェントを作れば実現できますが、作り込みと運用の設計が必要です |
「頼めば下書きしてくれる」ところまでは、ライセンスを配った初日から使えます。一方で、「届いたメールに自動で下書きを用意しておく」ような使い方は、まだ作り込みが要る段階です。どこまでを Copilot の標準機能に任せ、どこからを作り込むかは、第8回で扱うエージェントの話につながります。
LINE WORKSとTeamsの違い ― 移行するかの判断
チャットについては、メールよりも判断が難しくなります。LINE WORKS は LINE に近い操作感で、スマホ中心の現場に広く定着しています。まず、Copilot の観点での違いを整理します。
| 観点 | LINE WORKS | Microsoft Teams |
|---|---|---|
| Copilot からの参照 | そのままでは参照されない | 本人が参加しているチャット・チャネル・会議の記録が参照される |
| 社外とのやりとり | LINE ユーザーや他社の LINE WORKS ユーザーとつながる | 他社の Teams ユーザーとは外部アクセスでチャット、ゲスト招待でチームに参加してもらえる |
| 会議・ファイルとの一体性 | 別機能として持つ | 会議の文字起こし、ファイル(SharePoint)とチャットが一体 |
| 履歴の管理 | 管理者画面の監査でトークログを検索・ダウンロード。ログは180日まで保存。アーカイブオプションで最長10年保存 | Microsoft Purview の保持ポリシーなどで管理 |
Teams の外部アクセスとゲストアクセスの違いは、Microsoft Learn の「ゲスト アクセスと外部アクセスを使用して、組織外の人々とコラボレーションする」で比較されています。外部アクセスは他の組織のユーザーと検索・チャット・通話ができる機能で、ファイル共有やチームのリソースへのアクセスはゲストアクセスで行います。
3つの選択肢
LINE WORKS から Teams への移行は、全部移すか残すかの二択ではありません。
- A:Teams に全面移行する——社内外のやりとりの大半が社内メンバー同士、または Microsoft 365 を使う取引先とのもので、LINE でつながる相手が少ない場合
- B:社内は Teams、社外は LINE WORKS を残す——顧客や協力先と LINE でやりとりしている現場がある場合。社内の報告・相談・意思決定を Teams のチャネルに寄せ、Copilot の材料にします
- C:当面は LINE WORKS を続ける——Copilot の対象部門が限られ、その部門のやりとりがメールと会議中心の場合。まずメールとファイルを整え、チャットは後から判断します
多くの非IT企業では B が現実的な出発点になります。前編で触れたとおり、Copilot で「組織の知」にしたいのは、担当者同士の1対1のやりとりより、部門や案件のチャネルでの報告・相談です。その部分を Teams に寄せるだけでも、Copilot が引き出せる情報は大きく変わります。
ただし B を選ぶ場合は、「どの話をどちらでするか」のルールがないと、社内のやりとりも LINE WORKS に残り続けます。「社内の報告・相談・決定事項は Teams のチャネル」「社外の相手との連絡は LINE WORKS」と、相手で線を引くのが分かりやすい方法です。
判断の軸
どの選択肢を取るかは、次の4点で判断します。
- 社外の LINE ユーザーとのやりとりの多さ——日常的に顧客や協力先と LINE でやりとりしているなら、B か C
- Copilot に読ませたい会話の所在——意思決定に使いたい報告や相談が LINE WORKS のグループトークに集中しているなら、そこを Teams に寄せる価値が大きい
- LINE WORKS の契約更新時期——更新が近ければ A を検討する機会になり、1年以上先なら B で並行しながら様子を見られる
- 現場の端末環境——スマホだけで仕事をしている社員が多い場合、Teams のモバイルアプリでの運用を試してから決める
トーク履歴の扱い
LINE WORKS のトーク履歴を Teams のチャットとしてそのまま移し替える前提では、計画しないほうが安全です。現実的なのは、必要な期間のログを書き出して保管する方法です。
LINE WORKS では、管理者画面の[監査]→[トーク]でメンバーが送受信したトークの履歴を検索し、ダウンロードをリクエストしてファイルを取得できます。監査のログは180日まで保存され、リクエストしたダウンロード項目はダウンロード可能になってから15日後に削除されます(出典:LINE WORKS ヘルプ「トーク(監査)」、「ログのダウンロード」)。180日より前のトークを残したい場合は、スタンダード・アドバンストプランに追加できるアーカイブオプションで、1年から最長10年まで保存する設定があります(出典:LINE WORKS ヘルプ「アーカイブの設定」)。
書き出したログには、社員の私的なやりとりや取引先の個人情報が含まれることがあります。保管場所は閲覧できる人を限った場所にし、「誰がどんな目的で見てよいか」を決めておきます。書き出したログを誰でも見られる SharePoint に置くと、Copilot の回答に意図しない内容が出てくる原因になります。この権限の考え方は、次回の第3回で詳しく扱います。
ライセンスと技術の前提
メールとチャットの行き先が決まったら、ライセンスと技術の前提を確認します。
Copilotの前提となるプラン
Microsoft 365 Copilot は、対象となる Microsoft 365 のプランに追加するライセンスです。中堅・中小企業向けの Copilot Business の対象は、Microsoft 365 Business Basic・Business Standard・Business Premium・Microsoft 365 Apps for business です。大企業向けは Microsoft 365 E3・E5 などが対象になります(出典:Microsoft Learn「Microsoft Copilot のライセンス オプション」)。
ここで注意したいのが Microsoft 365 Apps for business です。このプランにはメール(Exchange Online)が含まれていません(出典:前掲「Microsoft 365 の共有メールボックスについて」)。Word や Excel で Copilot を使うことはできても、社内のメールを Copilot で扱うことはできません。本記事のようにメールも Microsoft 365 に寄せる前提なら、Business Standard 以上が選択肢になります。
価格は、2026年9月時点の Microsoft の公式ページで次のとおりです(税抜)。
| プラン | 価格(1ユーザーあたり月額換算) |
|---|---|
| Microsoft 365 Copilot Business(アドオン・年払い) | 3,148円 |
| 同(アドオン・月払い) | 3,778円 |
Copilot Business は最大300ユーザーまでのプランで、2026年7月1日〜12月31日は、対象プランを持つ既存顧客の年間契約で初年度が 2,698円になるキャンペーンが案内されています(出典:Microsoft 365 Copilot プランと価格)。価格とキャンペーンは変更されることがあるため、契約前に必ず公式ページで確認してください。全員に配るか、部門を絞るかの考え方は、第1回の「二層で始める」を参照してください。
買い切り版Officeとの違い
「Office は買い切り版を入れている」という会社は、ここで立ち止まる必要があります。Copilot を Word・Excel・PowerPoint・Outlook の中で使うには、Microsoft 365 Apps(サブスクリプション版の Office アプリ)の展開が前提です。買い切り版の Office は Copilot の前提プランに含まれていません。また、Microsoft 365 Apps for enterprise をデバイス単位のライセンスで使っている場合も、Copilot は使えないとされています(出典:前掲「Microsoft Copilot 管理者のアプリとネットワークの要件」)。
アカウントの統一(Microsoft Entra ID)
Copilot を使うユーザーには、Microsoft Entra ID(Microsoft 365 のアカウントを管理する仕組み)のアカウントが必要です。非IT企業で見直しが必要になりやすいのは次の3点です。
- 共用アカウント——「事務所PC用」「現場用」のように複数人で1つのアカウントを使っていると、Copilot の参照範囲と利用記録が個人と結びつきません。1人1アカウントにそろえます
- 退職者・異動者のアカウント——使われていないアカウントや、異動前の権限が残ったアカウントは、第3回で扱う権限の棚卸しの対象になります
- OneDrive・Teams の有効化——ファイル関連の一部機能には OneDrive、会議の要約には Teams の文字起こしや録画の有効化が必要です
Microsoft 365 Copilot導入前チェックリスト
前編と後編の内容を、導入前に確認するチェックリストにまとめます。4つのブロックで確認し、×が残った項目は、どの回の作業で解消するかを決めてから導入に進みます。
ファイル
- 社内データの置き場所(外部ストレージ・ファイルサーバー・個人PC・M365)を一覧にした
- Copilot に読ませたい資料がどこにあるかを特定した
- 共有前提のファイルは SharePoint、下書きは OneDrive という原則を決めた
- Box など外部ストレージの扱い(全面移行・残置して接続・段階移行)を決めた
- 「組織内の全員」に共有されたままの資料がないか、確認する担当と時期を決めた
×が残ったら:置き場所は前編、共有設定の棚卸しは第3回、機密区分の設計は第4回で扱います。
メール・チャット
- 全社員のメールの受信方式(IMAP・POP・Gmail 等)と保存場所を調べた
- Exchange Online への移行方式と、過去メールを移す範囲を決めた
- MX 切替日と、DNS を管理している相手を確認した
- 共有アドレス(info@ など)を共有メールボックスにする設計と、メンバーを決めた
- チャットの方針(Teams 全面移行・併用・当面継続)と、「どの話をどちらでするか」のルールを決めた
- LINE WORKS 等のトーク履歴を、どの期間・どこに・誰が見られる形で保管するかを決めた
- メールとチャットの保持期間(何年分残すか)を決めた
×が残ったら:本記事の各節を使って移行計画を立てます。
アカウント・ライセンス
- 全員が1人1つの会社アカウント(Microsoft Entra ID)を持っている
- 契約中のプランが Copilot の前提プランに含まれ、メール(Exchange Online)を含んでいる
- Office が買い切り版ではなく、Microsoft 365 Apps になっている
- 有償の Copilot を配る部門・人数と、未利用席の回収ルールを決めた
- 個人向けの無償 AI を業務で使わせないルールがある
×が残ったら:プランは本記事のライセンスの節、配り方は第1回を参照してください。
体制・ルール
- 経営に近い立場の推進責任者が決まっている
- 情報システムの実務を誰が担うか(社内・外部パートナーの分担)が決まっている
- 社内規則が Copilot の利用を妨げていないか確認した
- パイロットで効果をどう測るか(対象業務と指標)を決めた
×が残ったら:規則の読み合わせは特別編、ガイドラインは第5回、パイロットの設計は第6回で扱います。
チェックリストで大切なのは、全部に○がつくまで導入を待つことではありません。×の項目を「やらないこと」にせず、いつ・誰が解消するかを決めることです。たとえば「メールは移行済み、チャットは当面 LINE WORKS、ファイルの権限は第3回の作業で是正してから有償席を配る」という計画が立てば、それは十分に導入を始められる状態です。
K.S.Rogers の支援
K.S.Rogers では、非IT企業の Microsoft 365 Copilot 導入を、このチェックリストの確認から伴走しています。メールの受信方式や保存場所の調査、Exchange Online への移行計画と MX 切替の段取り、LINE WORKS と Teams の使い分けルールづくり、ライセンス構成の整理まで、社内に専任の情報システム担当がいない会社でも進められる形に分解してお手伝いします。
「移行が必要なのは分かったが、どこから手をつければいいか分からない」という段階からご相談いただけます。メールやチャットが整ったあと、請求書の仕分けや転記などの定型業務の自動化まで進めたい場合は、OpeZeroで対応しています。ご相談はお問い合わせからどうぞ。
まとめ
- Copilot が Outlook で社内のメールを扱えるのは、メールボックスが Exchange Online にあるときです。移行方式は、IMAP・POP・Exchange Server という今の環境で決まります
- すでに Google Workspace を使っている会社は、Copilot のためだけに移る必要はありません。移行を検討するのは、Excel や Teams を前提にした取引先とのやりとりなど、Copilot 以外の理由があるときです
- 移行で揉めるのは技術より段取りです。MX切替日・共有アドレス・並行運用のルールを先に決め、メーラーが変わる負担には日常の利点とセットで向き合います
- LINE WORKS から Teams への移行は、社内は Teams、社外は LINE WORKS という併用も現実的です。トーク履歴は必要な期間を書き出し、閲覧できる人を限って保管します
- 導入前チェックリストは4ブロックで確認し、×が残った項目をどの回で解消するかを決めてから導入に進みます
次回の第3回では、Copilot の情報漏洩対策の中心となる、SharePoint・OneDrive・Teams の共有設定の棚卸しと是正を扱います。
よくある質問
Q.Google Workspace(会社のGmail)を使っていますが、Copilotのために Microsoft 365 へ移るべきですか?
A.Copilot のためだけに移るメリットは小さいと考えています。Google Workspace にはメール・ファイル・文書・会議がそろっており、同じように社内データを材料にする生成AI(Gemini)も組み込まれています。移行を検討するのは、Excel や Teams を前提にした取引先とのやりとりなど、Copilot 以外の理由があるときです。
Q.POPで受信してPCに溜めているメールも、Exchange Onlineに移行できますか?
A.移行できます。ただし、POPで受信したメールはサーバーから消えていることが多く、サーバーから取り込むIMAP移行では拾えません。PCのメールデータをPST形式で書き出し、Microsoft PurviewのPSTインポートやOutlookの取り込み機能で移します。どこまで移すかを先に決めると、作業量を抑えられます。
Q.LINE WORKSのトーク履歴は、Teamsに移せますか?
A.Teamsのチャットとしてそのまま移し替える前提では計画しないほうが安全です。LINE WORKSは管理者画面の監査からトークの送受信ログを検索・ダウンロードでき、ログの保存は180日までです。解約前に必要な期間のログを書き出し、閲覧できる人を限った場所に保管するのが現実的です。
Q.Microsoft 365 Copilotを使うには、どのプランが必要ですか?
A.Microsoft 365 Business Basic・Business Standard・Business Premium、Microsoft 365 E3・E5などの対象プランに、Copilotのライセンスを追加する形です。Microsoft 365 Apps for business にはメールが含まれないため、社内のメールをCopilotで扱いたい場合はExchange Onlineを含むプランを選びます。
Q.メールをExchange Onlineに移さないと、Copilotは使えませんか?
A.WordやExcelでの文書作成支援など、メール以外の機能は使えます。ただし、Outlookでのメールの要約や、過去のメールを根拠にした回答は、メールボックスがExchange Onlineにあることが前提です。Copilotの効果を大きく左右する部分なので、導入計画ではメールの移行を切り離さずに検討します。