AX支援とは|AX(AI Transformation)の意味とDXとの違い、中小企業が進める順番ARTICLE
ARTICLEAX・業務自動化
「AXという言葉を最近よく聞くが、DXと何が違うのか分からない」「AX支援を名乗る会社が増えたが、何を頼めるのか見えない」——経営者や管理部門の方から、こうしたご質問をいただくことが増えました。
生成AIの登場で、AIに任せられる仕事の範囲は大きく広がりました。一方で、ChatGPT などのツールを契約しただけで「使っている人は一部」「業務は何も変わっていない」という状態にとどまっている企業も少なくありません。AXは、この「ツールを入れた」と「業務が変わった」の間にある溝を越えるための考え方です。
本記事では、AX(AI Transformation)とAX支援の意味、DXとの違い、中小企業がAXを進める順番、支援会社の選び方を整理します。あわせて、神戸を拠点とする K.S.Rogers が掲げる「関西AX」の考え方と、関西での取り組み事例をご紹介します。
この記事の要点
- AX(AI Transformation)とは、AIの活用によって業務プロセスそのものを見直し、生産性と競争力を高める取り組みです。AX支援とは、その取り組みを業務の棚卸しから実装・定着まで外部の専門家が伴走する支援です
- DXが「業務やビジネスのデジタル化」を広く指すのに対し、AXは「人が読んで判断していた作業」までAIに任せ、仕事の流れそのものを組み替える点が違います
- 中小企業のAXは、①業務の棚卸し → ②P/L効果で優先順位 → ③小さく自動化 → ④定着、の順番で進めます。全社一斉のツール導入から始めないことが成功の条件です
- バックオフィスだけを自動化しても、人件費は減らずP/Lは動きにくいのが実情です。P/Lに効くのは、減った時間が売上に直結する営業・営業事務の効率化です
AXとは ―― AI Transformation の意味
AX(AI Transformation)とは、AIの活用によって業務プロセスそのものを見直し、生産性と競争力を高める取り組みです。「AIトランスフォーメーション」「AIによる変革」とも呼ばれます。
ポイントは「AIツールを使うこと」ではなく、「AIを前提に仕事の流れを組み替えること」にあります。たとえば、次の2つはどちらも生成AIの活用ですが、意味合いが違います。
- ツールの利用:担当者が、請求書の内容をチャットAIに貼り付けて要約してもらう
- AX:届いた請求書をAIが読み取り、請求元・金額・明細を抽出して基幹システムのデータと突き合わせ、差異があるものだけを担当者に回す
前者は個人の作業が少し速くなるだけですが、後者では「担当者が全件を開いて確認する」という業務の流れそのものが変わっています。AXが目指すのは後者です。
「AI導入」「生成AI活用」との違い
AXと似た言葉に「AI導入」「生成AI活用」があります。厳密な使い分けが決まっているわけではありませんが、次のように整理すると社内で話がかみ合いやすくなります。
| 言葉 | 主に指すもの | ゴールの置き方 |
|---|---|---|
| AI導入 | AIツールやAIを組み込んだシステムを社内に入れること | ツールが使える状態になること |
| 生成AI活用 | 社員が生成AIを使って、文章作成や要約などの作業を効率化すること | 個人の作業時間が短くなること |
| AX | AIを前提に業務の流れを組み替え、組織として生産性を上げること | 業務とP/Lが変わること |
AI導入や生成AI活用は、AXを進めるための手段の一部です。「導入したのに成果が見えない」と感じる場合は、ゴールを「ツールが使える」から「業務が変わる」に置き直すことが出発点になります。
AX支援とは ―― 何を支援してもらえるのか
AX支援とは、企業がAIで業務を変える取り組みを、外部の専門家が伴走して進める支援です。AIツールの販売や研修だけを指す言葉ではなく、一般的には次の4つの領域を含みます。
| 領域 | 内容 | 成果物の例 |
|---|---|---|
| 業務の棚卸し・診断 | どの業務に、誰が、どれだけ時間をかけているかを可視化し、AIに任せる候補を洗い出す | 業務一覧、自動化候補とロードマップ |
| 効果の試算・優先順位 | 削減できる時間や費用をP/L(損益)への効果に換算し、着手する順番を決める | 効果試算、優先順位の一覧 |
| 実装 | AIエージェント・RPA・OCRなどを組み合わせ、今の業務フローに組み込む | 動く仕組み、操作手順 |
| 運用・定着 | 稼働後のエラー対応や改修、効果の確認を続け、現場が使い続けられる状態にする | 運用マニュアル、定例での効果確認 |
「AI研修を実施した」「チャットAIのアカウントを配った」だけでは、AXの入口に立ったにすぎません。支援会社によって得意な領域は異なるため、自社がどこでつまずいているかを先に見極めることが大切です(選び方は後述します)。
AXとDXの違い
DX(デジタルトランスフォーメーション)について、経済産業省は、データとデジタル技術を活用して製品・サービスやビジネスモデルを変革するとともに、業務や組織、プロセス、企業文化まで変革し、競争上の優位性を確立することと位置づけています(出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード」)。
DXは非常に広い概念です。これに対し、AXはAIを軸にした変革に焦点を当てた言葉です。両者を対立するものとして捉える必要はなく、AXはDXの延長線上にある、より踏み込んだ段階と考えると分かりやすくなります。
| 観点 | DX(デジタルトランスフォーメーション) | AX(AI Transformation) |
|---|---|---|
| 中心になる技術 | クラウド、業務システム、データ基盤など、デジタル技術全般 | 生成AI、AIエージェント、AI-OCRなど、AI |
| 変わること | 紙や手作業がデジタルに置き換わり、情報が見える化される | 人が読んで判断していた作業をAIが担い、業務の流れが組み替わる |
| 人の役割 | デジタルツールを操作して、入力・確認・判断する | AIの結果を確認し、例外や判断が必要なものに集中する |
| 典型的な例 | 紙の請求書を電子化し、会計システムに入力する | 届いた請求書をAIが読み取り、仕分けと突合まで行い、差異だけを人に回す |
| 投資の考え方 | システム導入費と、見える化による効率化 | 削減できる作業時間を、残業代・外注費・採用抑制などP/Lの効果で評価 |
「DXが終わっていないとAXはできない」は本当か
「うちはまだ紙とExcelが中心で、DXも道半ば。AXなんて早い」という声もよく聞きます。確かに、AIが扱える形でデータがあることは重要です。
ただし、生成AIはPDFや画像、表記ゆれのある文書も読み取れます。つまり、これまでDXの壁になっていた「形式がバラバラな書類」こそ、AIが得意とする領域です。すべてのシステムを刷新してからAXに進む、という順番を守る必要はありません。
一方で、「どこにファイルがあるか誰も分からない」「担当者ごとに手順が違い、正解がない」という業務は、AIに任せても混乱が増えるだけです。こうした業務は、自動化の前に置き場所や手順を整えます。業務を絞ればAXは今日から始められるが、整理されていない業務はまず整理する——これが現実的な答えです。
なぜ今、中小企業にこそAXなのか
AXは大企業だけのテーマではありません。むしろ、次のような事情を抱える中小企業ほど、効果を実感しやすい面があります。
- 採用で人を増やしにくい:業務量が増えても、すぐに人を採用できるとは限りません。今の人数で回る体制をつくることは、そのまま経営課題の解決になります
- 1人が多くの業務を兼務している:経理担当が総務も兼ねる、営業が見積書や報告書の作成まで担う、といった状況では、定型作業の削減がそのまま本来業務の時間になります
- 業務が特定の人に依存している:ベテランの頭の中にある手順を、AIに任せる過程で言語化・標準化できます
- 意思決定が速い:経営者が判断すれば、対象業務を決めてすぐに試せます。大企業のような長い稟議や全社調整を経ずに進められるのは強みです
また、生成AIの登場によって、以前ならシステム開発が必要だった「文書を読んで判断する作業」も、比較的小さな投資で自動化の対象にできるようになりました。大規模なシステム投資をしなくても、1つの業務から始められることが、今AXに取り組む理由です。
AXで変わる業務の例(部門別)
「AIで業務を変える」と言っても、イメージが湧きにくいかもしれません。中小企業で対象になりやすい業務を、部門別に整理すると次のようになります。
| 部門 | 今の業務 | AXで変わる姿 |
|---|---|---|
| 経理 | 届いた請求書を1件ずつ開き、会計システムに手入力して、発注データと照合する | AIが請求書を読み取って仕分けと入力の下書きを行い、発注データと一致しないものだけを担当者が確認する |
| 営業 | 商談後に報告書を作り、見積書の作成や顧客情報の更新に時間を取られる | 商談メモから報告書の下書きをAIが作成し、顧客情報の更新も自動で反映。営業は商談の準備に時間を使う |
| 総務・人事 | 応募書類や社内申請の内容を、所定のフォーマットに転記する | 形式の異なる書類をAIが読み取り、自社フォーマットへ自動で転記する |
| 購買・業務 | 取引先から届く注文書や見積書を、基幹システムに入力して突き合わせる | AIが明細を抽出して基幹システムのデータと突合し、差異のある明細だけを通知する |
| 管理部門全般 | 過去の議事録や記録を探し、経緯を把握するのに時間がかかる | 蓄積された記録をAIが要約し、過去のやりとりをすぐに把握できるようにする |
共通しているのは、AIが「読む・仕分ける・下書きする」を担い、人は「確認する・判断する・例外に対応する」に集中するという役割分担です。人の仕事をなくすのではなく、人にしかできない仕事に時間を戻すことがAXの狙いです。
中小企業がAXを進める順番(4ステップ)
AXで成果を出している企業に共通するのは、ツール選びの前に業務と優先順位を整理していることです。進める順番は次の4ステップです。
ステップ1:業務の棚卸し
まず、どの業務に、誰が、どれだけの時間をかけているかを書き出します。完璧な業務一覧をつくる必要はありません。次の項目を、部署ごとに主要な業務について押さえれば十分です。
- 業務名と担当者
- 発生頻度(毎日・毎週・毎月・都度)と、1回あたりの作業時間
- 使っている書類やシステム(PDF、Excel、会計システム、基幹システムなど)
- 判断が必要な箇所と、例外が起きる頻度
この段階で「毎月末に3人が丸2日かけている転記作業」のような、時間の大きな塊が見えてきます。
ステップ2:P/L効果で優先順位を決める
候補の業務が見えたら、削減できる時間をP/L(損益計算書)への効果に換算して順位をつけます。「AIで何ができるか」ではなく「どの業務を変えると経営に効くか」で選ぶことが、AXを目的化させないコツです。
P/Lへの効果は、大きく3つに分けて考えます。
| 効果の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 出ていくお金が減る | 残業代、派遣・外注費、アルバイト代の削減。月末月初の負荷の平準化 |
| 出るはずのお金が出なくなる | 増員採用の抑制、採用・教育コストの削減、欠員時の業務停滞の防止 |
| 売上が増える | 営業の事務作業が減ることによる商談件数の増加、対応スピードの向上 |
あわせて、「発生頻度が高く、ルールが明確な業務」ほど自動化に向いています。向く業務の見極め方はAI業務自動化の始め方で詳しく解説しています。また、同じ時間の削減でも、バックオフィスと営業側ではP/Lへの効き方がまったく違います。この点は、後の章「バックオフィスだけのAXでは、P/Lは動きにくい」で詳しく説明します。
ステップ3:小さく自動化する
優先順位の高い1つの業務から、小さく自動化します。ここで大切なのは次の3点です。
- 業務フローを大きく変えない:現場が慣れた手順のまま、手作業の部分だけをAIに置き換えます。「新しいシステムの使い方を覚える」負担を増やすと定着しません
- 人の最終確認を残す:AIの出力は100%正しいとは限りません。最初は人が結果を確認する工程を残し、精度を見ながら任せる範囲を広げます
- デモで確認しながら作る:完成してから見せるのではなく、動くものを早い段階で現場に見てもらい、例外のケースを拾います
ステップ4:定着させる
稼働して終わりではありません。業務は変わり続けるため、書類の様式が変わった、取引先が増えた、といった変化にあわせて改修が必要になります。
- 稼働直後は、エラーや例外への対応を手厚くする
- 節目ごとに、削減できた時間とP/Lへの効果を確認する
- 現場の担当者が「困ったときに誰に聞けばよいか」を決めておく
- 1つ目の業務で効果が出たら、ステップ1に戻って次の業務に広げる
この4ステップを1つの業務で回し切ると、社内に「AIで業務を変える型」が残ります。2つ目以降の業務は、1つ目よりずっと速く進みます。
バックオフィスだけのAXでは、P/Lは動きにくい
AXの対象として真っ先に挙がりやすいのは、経理・総務・人事などのバックオフィスです。定型業務が多く、自動化しやすいからです。ただし、バックオフィスの作業時間を減らしても、それだけでは人件費はほとんど減りません。
- 作業が減っても、給与は減らない:日本では、業務が自動化されて仕事が減ったことを理由に社員を解雇することは簡単ではありません(労働契約法 第16条)。作業時間が減っても、給与という固定費はそのまま残ります
- バックオフィスは、配置転換の受け皿になっていることが多い:現場や営業からの異動を受け入れる部署になっている会社も多く、人員を減らす前提では考えにくい部署です
- P/Lに確実に出るのは、変動費の部分まで:バックオフィスのAXで数字に表れるのは、残業代、派遣・外注費、アルバイト代の削減が中心です
一方で、営業と営業事務の効率化は、売上に直結します。見積書の作成、商談報告、受発注の入力、顧客情報の更新といった作業が減れば、営業担当は商談や提案に使える時間が増え、問い合わせへの対応も速くなります。減った時間がそのまま商談件数や受注率の改善につながるため、P/Lの「売上」の側を動かせます。
| 比べる点 | バックオフィスのAX | 営業・営業事務のAX |
|---|---|---|
| 減った時間の行き先 | 別の業務を割り当てないと、給与はそのまま残る | 商談・提案・顧客フォローに回る |
| P/Lに出る効果 | 残業代・派遣・外注費の削減が中心 | 商談件数・対応スピード・受注率の改善による売上の増加 |
| 効果の大きさ | 削減できるのは変動費の範囲までで、上限が見えやすい | 売上の伸びとして表れるため、大きくなりやすい |
もちろん、バックオフィスのAXに意味がないわけではありません。月末月初に残業が集中している、派遣や外注に頼っている、欠員で業務が止まりかけている、といった場合は、はっきりした効果が出ます。大切なのは、自動化しやすいかどうかではなく、P/Lに効くかどうかで対象を選ぶことです。K.S.Rogers では、業務の棚卸しの段階から営業側の業務を候補に入れ、バックオフィスを自動化する場合も「減った時間を何に使うか」を先に決めてから着手することをおすすめしています。
AXを始める前に、経営者が決めておくこと
AXは現場の業務を変える取り組みですが、現場だけに任せると「忙しくて棚卸しが進まない」「どこまでAIに任せてよいか誰も決められない」で止まりがちです。着手する前に、経営者として次の点を決めておくと、進み方が大きく変わります。
- 目的:残業の削減、採用を増やさずに業務量の増加に対応する、コア業務への配置転換など、何のためにAXに取り組むのか
- 推進の責任者:部門をまたいで業務の棚卸しを進め、優先順位を決められる人は誰か
- 最初の対象範囲:全社ではなく、どの部門のどの業務から始めるか
- AIに任せてよい範囲:社外に出してはいけない情報、人が必ず確認する工程はどこか
- 効果の測り方:導入前の作業時間をどう測り、何をもって成功とするか
- 人員の考え方:削減できた時間を、どの業務に振り向けるのか
特に最後の「人員の考え方」は、現場の協力を得るうえで重要です。「AIで仕事がなくなるのでは」という不安があると、業務の実態を話してもらえず、棚卸しが進みません。人を減らすためではなく、人にしかできない仕事に時間を使うためという方針を、最初に言葉にして伝えておきます。
AXでよくある失敗
AXがうまくいかないケースには、共通したパターンがあります。
- ツール先行で始める ―― 「話題のAIツールを契約する」ことから始めると、使い道を探す状態になります。業務の棚卸しより先にツールを決めないことが大切です
- PoC(試験導入)で止まる ―― 試しに作ったものの、本番の業務に組み込む設計がなく、検証だけで終わるケースです。試す段階から「本番でどう使うか」を決めておきます
- 一部の詳しい人しか使えない ―― プロンプトやワークフローが特定の担当者の手元にとどまり、異動や退職で止まります。誰でも同じ結果が出る仕組みにすることが定着の条件です
- 効果を測っていない ―― 導入前の作業時間を測っていないと、「なんとなく便利になった」しか言えず、次の投資判断ができません
- 全社一斉に広げようとする ―― 部署ごとに業務も課題も違います。効果の出やすい1業務で成功例をつくってから広げるほうが、結果的に速く進みます
- バックオフィスだけを自動化する ―― 自動化しやすい管理部門の作業だけを対象にすると、作業時間は減っても人件費は変わらず、「効果が見えない」で終わります。売上に直結する営業・営業事務の業務も候補に入れて比べます
AX支援の選び方 ―― 自社で進めるか、支援を頼むか
ノーコードツールの充実で、AXの一部は自社でも進められるようになりました。次の4つに「いいえ」が多いほど、外部のAX支援を使うほうが早く進みます。
- 社内に、AIやシステムに詳しく、業務も分かる人がいる
- AIに任せたい業務がはっきりしている
- 会計システムや基幹システムなど、既存のシステムと接続しなくてよい
- 作った後のエラー対応や改修を、社内で回せる
AX支援の会社を比べるときは、ツールの機能より「進め方」を確認します。
| 確認すること | 見るべきポイント |
|---|---|
| 業務の棚卸しから入るか | いきなりツールを提案するのではなく、どの業務を変えるべきかを一緒に見極めるか |
| 導入前に効果を試算するか | 削減時間やP/Lへの効果を、導入前に数字で示してくれるか |
| 既存システムとの接続を調べるか | 社内端末でしか見られないデータや基幹システムなど、自社の環境で動くかを事前に調べるか |
| 現場に来てくれるか | 業務の実態を、会議室の説明だけでなく現場で確認してくれるか |
| 運用・改修の範囲が明確か | 稼働後のエラー対応や改修、効果確認の範囲と費用が決まっているか |
特に「現場に来てくれるか」は見落とされがちです。業務の例外や暗黙の手順は、担当者の作業を横で見ないと分からないことが多く、ここで拾えなかったことが稼働後の手戻りになります。
AX支援の費用はどう考えるか
AX支援の費用は、支援の範囲と料金の形によって大きく変わります。初期費用をまとめて支払う形、月額で支払う形、個別に見積もる形などがあり、どれが良いかは自社の状況次第です。
比較するときに大切なのは、費用の総額だけでなく「何と比べて高いか安いか」を決めておくことです。AXの費用は、ツールの価格ではなく、その業務にかかっている人件費や外注費、採用を増やさずに済む効果と比べて判断します。たとえば、毎月30時間かかっている転記作業が自動化されれば、その30時間分の残業代や、繁忙期に頼んでいた派遣費用が比較の対象になります。
そのためにも、ステップ1の棚卸しで「今どれだけ時間がかかっているか」を測っておくことが、費用の妥当性を判断する土台になります。
「関西AX」の考え方 ―― 神戸から、現場に伺うAX
関西AX(AI Transformation)とは、関西から日本全国の企業のAI変革を推進する K.S.Rogers の事業コンセプトです。K.S.Rogers は兵庫県神戸市を拠点とし、神戸・関西を起点に、日本全国の企業のAXを支援しています。関東にもメンバーがおり、特に関西・関東・名古屋の企業にはよく伺っています(事業内容:関西AXとは)。
「関西AX」という言葉には、次の考え方を込めています。
- AIは道具であり、目的は業務と経営を変えること:AIを入れること自体を目的にせず、P/Lに効く業務から変えていきます
- 現場に伺い、業務を見てから作る:K.S.Rogers では、FDE(Forward Deployed Engineer:現場に入り込んで課題の発見から実装までを担うエンジニア)が現場に伺い、担当者の実際の作業を見ながら自動化を設計します。面着とオンラインの両軸で伴走し、業務の実態をつかむ場面や関係者の合意が必要な場面では、面着で進めます
- 作って終わりにしない:稼働後の改修と効果の確認までを支援の範囲とし、現場が使い続けられる状態をつくります
製造業や行政をはじめ、関西には長い歴史の中で業務の型を築いてきた組織が多くあります。その型を尊重しながら、手作業で支えてきた部分をAIに置き換えていく——それが私たちの考えるAXです。
関西での取り組み事例
K.S.Rogers がこれまでに支援した取り組みの一部をご紹介します。
- 川崎重工業株式会社 総務本部:FDEが現場に伺い、生成AIを活用したルーチンワークの自動化を支援しました。複数部署の定型業務から計7テーマを自動化し、人による最終確認を残しながら、毎月の繰り返し作業の時間を削減しています(プレスリリース)
- 神戸市:神戸市SO-I「AIを活用した行政課題解決コース」に採択され、これまでの業務で蓄積された記録をAIで要約し、過去のやりとりを把握しやすくする取り組みを進めました(プレスリリース)
- 請求書の仕分け・転記の自動化:フォルダに入れるだけで、AIが請求元・金額・明細を読み取って振り分ける仕組みを構築。月次経理作業の負担を65%削減し、決算業務を2営業日前倒ししました
- 職務経歴書の転記の自動化:形式の異なる職務経歴書を自社フォーマットへ自動で転記し、1件あたりの作業時間を20分から3分に短縮しました
- 専門商社様の請求書明細の突合:仕入先から届く請求書の明細を生成AIで抽出し、基幹システムのデータと自動で突き合わせる仕組みで、転記工数の削減と照合ミスの防止を実現しました
いずれも、最初から全社の変革を目指したのではなく、特定の業務から始めて、人の確認を残しながら範囲を広げている点が共通しています。
K.S.Rogers のAX支援
K.S.Rogers は、「関西AX」を事業コンセプトに、2つの事業で企業のAXを支援しています。
- AX支援(OpeZero):AIエージェント・RPA・OCRを組み合わせて、企業のルーチンワークを自動化するサービスです。システム環境調査(20万円〜)で実装方法とP/L効果、月額を確定してご提案します。運用報酬型なら構築費0円で、稼働後は月額固定です(構築規模に対して効果が小さい場合は、構築費の一部をご相談させていただくことがあります)。構築はおおむね1週間〜1か月で、調査には1〜4週間をいただきます
- スタートアップスタジオ事業:AIを組み込んだ新規事業やプロダクトを、企画から開発・営業まで一気通貫で支援します
「そもそもどの業務をAIに任せるべきか分からない」「やりたいことはあるが要件が固まっていない」という段階であれば、要件定義支援で整理から始めることもできます。
AXの進め方全体をもう少し具体的に知りたい方は、AI業務自動化の始め方もあわせてご覧ください。
まとめ
- AX(AI Transformation)とは、AIの活用によって業務プロセスそのものを見直す取り組みです。AX支援は、それを業務の棚卸しから実装・定着まで伴走する支援です
- DXが業務やビジネスのデジタル化を広く指すのに対し、AXは人が読んで判断していた作業までAIに任せ、仕事の流れを組み替える点が違います
- 中小企業のAXは、業務の棚卸し → P/L効果で優先順位 → 小さく自動化 → 定着、の順番で、1つの業務から始めます
- バックオフィスだけのAXでは人件費は減らず、P/Lは動きにくいのが実情です。対象は「自動化しやすさ」ではなく「P/Lへの効き方」で選び、売上に直結する営業・営業事務の効率化を優先して検討します
- 支援会社は、棚卸しから入るか、導入前に効果を試算するか、現場に来てくれるか、運用まで見てくれるかで選びます
AXの進め方や、どの業務から始めるべきかでお悩みの際は、お問い合わせよりお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q.AXとは何の略ですか?
A.AXは「AI Transformation(AIトランスフォーメーション)」の略です。AIの活用によって業務プロセスそのものを見直し、生産性と競争力を高める取り組みを指します。
Q.AXとDXの違いは何ですか?
A.DX(デジタルトランスフォーメーション)は、業務やビジネスのデジタル化を広く指す言葉です。AXは、その中でもAIを軸にして、これまで人が読んで判断していた作業まで含めて業務の流れそのものを変える取り組みを指します。紙をデータにするのがDXの入口だとすれば、そのデータをAIが読み、仕分け、下書きまで進めるのがAXです。
Q.AX支援とは何ですか?
A.AX支援とは、企業がAIで業務を変える取り組みを、外部の専門家が伴走して進める支援です。一般的には、業務の棚卸し、効果の試算と優先順位づけ、AIエージェントやRPAなどによる実装、運用と定着までを対象にします。
Q.中小企業でもAXに取り組めますか?
A.取り組めます。全社の変革から始める必要はなく、請求書の転記や報告書の作成など、毎月繰り返している1つの業務から始めるのが現実的です。専任の情報システム担当がいない場合は、業務の棚卸しから伴走するAX支援を使うと進めやすくなります。
Q.DXが終わっていないとAXは始められませんか?
A.すべてのデジタル化が終わるのを待つ必要はありません。AIはPDFや画像、表記ゆれのある文書も読み取れるため、紙やExcel中心の業務でも、対象業務を絞れば始められます。ただし、データの置き場所や業務の手順がまったく整理されていない業務は、先に整理してから自動化します。
Q.バックオフィスの業務から自動化すればよいですか?
A.バックオフィスだけを自動化しても、P/Lへの効果は限られます。日本では業務が減ったことを理由に社員を解雇することは難しいため、作業時間が減っても人件費はほとんど変わらず、効果は残業代や派遣・外注費の削減にとどまります。P/Lを動かしたいなら、減った時間が商談や提案に回り、売上に直結する営業・営業事務の効率化を優先して検討することをおすすめします。