要件定義の進め方|失敗しない手順とよくあるつまずきを実務目線で解説BLOG

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システム開発やDXの成否は、その多くが「要件定義」で決まります。ところが現場では、次のような声が絶えません。

  • 「社内のエンジニアに頼んだら、想定と違うシステムができあがり、修正を繰り返して時間を失った」
  • 「外注先とやっているが、納期遅延やバグが多発して、なぜかうまく回らない」
  • 「外注先とスクラムで開発しているが、要求・要件を忙しくて渡せず、開発PMに要件定義をお願いする形になって開発コストが膨らむ」

本記事では、こうした失敗を防ぐための要件定義の進め方を、K.S.Rogers で日々クライアントの上流工程に伴走する要件定義スペシャリストたちの知見と、実際の改善事例をもとに整理します。

要件定義とは何か ―― 現場の定義はひとつではない

「要件定義とは何か」は、実は一言では表せません。K.S.Rogers のメンバーに聞くと、それぞれ違う言葉で本質を語ります。

  • "翻訳" ―― ビジネスサイドの「やりたいこと」を、システムサイドが動ける形に落としていく作業
  • "橋渡し" ―― 要求の裏にある意図を整理し、作り手が動ける「設計可能な言葉」に返還するプロセス
  • "輪郭づくり" ―― 「こういうサービスが欲しい」という曖昧な種を、形のあるものにしていく作業
  • "指針づくり" ―― プロジェクト全体で合意するための土台。ここがしっかりしていればぶれない
  • "最適化の競技" ―― 立場も優先順位も違う人たちの期待値をすり合わせ、全体最適な着地点を見つける

表現は違っても、共通しているのは 「作るものを、関係者全員が納得できる形で決める」 という点です。単なる機能一覧づくりではありません。

詳しくは、K.S.Rogers のメンバー・パートナーが「要件定義とは何か」を多様な視点で語った要件定義インタビュー一覧もあわせてご覧ください。

なぜ「作ったのに使われない」が起きるのか ―― 失敗の3大原因

「想定と違う」「使われない」システムが生まれる背景には、たいてい共通した原因があります。

  1. 要件定義の役割不足 ―― そもそも要件を定義する役割が置かれておらず、開発が"手段"から始まってしまう
  2. 利用者の調査不足 ―― 実際に使う人の視点がないまま設計され、現場のペインとズレる
  3. 合意形成不足・影響範囲の確認漏れ ―― 関係者の認識が揃わないまま進み、後工程で「なんか違う」が噴き出す

要件定義を軽視すると何が起きるのか。現場のメンバーはこう表現します。

要件定義をしないと、開発は博打になります。サービスオーナーの頭の中にだけある"全体像"が共有されないまま進むと、作業者は目の前の小さなパーツだけを作ることになり、いざ組み合わせたときに「なんか違う」になりやすい。

手戻りのコストは工程が進むほど跳ね上がります。だからこそ、上流でしっかり合意しておくことが最も費用対効果の高い投資になります。

要件定義の進め方(5ステップ)

1. 「誰の、どんな課題か」を定める

「要件定義とは突き詰めると"誰の、どんな課題を解決するか"を明確にするプロセスだ」と、K.S.Rogers のメンバーは口を揃えます。利用者・現場担当・経営など、登場人物ごとに"帽子をかぶって"視点を切り替え、焦点をぶらさないことが出発点です。利用者の調査不足を防ぐ最初のステップです。

2. 要求を先に言語化する(要求と要件を切り分ける)

現場で実践されているのは、いきなり要件定義書を書かず、まず「デザインドック」で要求を整理する方法です。なぜこのプロジェクトが発足したのか、ゴールは何か、逆に何はやらないのか。要求がクリアになって初めて、要件を切る土台ができます。「なぜこの要件になったのか」という理由まで示すことが、後のブレを防ぎます。

3. コアバリューを握り、やらないことを決める

議論が細かくなるほど、そもそもの目的を見失いがちです。「結局やりたいことって何だっけ?」という視点を持ち続けることが大切だと、メンバーは口にします。コアバリューが見えていれば、「やるべきこと」「今やらなくていいこと」は自然と整理されていきます。やらないことを決めるのが要件定義の重要な役割です。

4. 深いヒアリングで背景・真意を掘る

現場で繰り返し強調されるのは「ヒアリングの質と深さ」です。もらった要件に100%応えるだけでは、背景にある課題や運用の事情を見落とします。「こうしたい」と言われても、裏で別の部隊が膨大な工数をかけていることもある。だからこそ、こちらから問いを立て、背景を掘り下げ、本当に必要な形へ導きます。

5. 完成イメージを使い、納得できる合意にする

要件定義は「妥協を納得に変える」作業でもあります。理想を全部叶えるにはリソースや予算のトレードオフがある。限られた条件の中で納得感のある妥協点を描き、関係者に飲んでもらう。モックアップや完成画面を使った合意形成で認識のズレを事前につぶすことが、手戻りを防ぐうえで特に効果的です。

よくあるつまずき

  • 作ること自体が目的化する ―― 特に「作りたい」が先行すると、本当に必要かの検証が抜ける。「なぜ今あえて作るのか?」を既存ツールと比較して問い直すことが有効です。
  • 手段から入ってしまう ―― 慣れていない人ほど「どう作るか」から始め、ユーザー目線で「それ要る?」という機能が混ざる。常に「なんでそれなの?本当に必要?」と問うことが大切です。
  • プロダクトアウトに寄る ―― 「テクノロジーでこんなことができる」という発想が、ユーザーの現場課題とズレてしまうことがあります。
  • 言われた通りに作る ―― 「なんか違う」は、クライアント自身も正解を持っていないことが多い。だからこそ問いを立てて本質的な合意まで導く必要があります。

実際の改善事例

要件定義を立て直すと、成果は数字にも表れます。K.S.Rogers の支援では、次のような改善が生まれています。

  • 利用率が 20% → 65% に改善:目的や要件が曖昧なまま開発され「使われないシステム」になっていた状態を、利用予定者への調査・モックアップでの合意形成によって「活用されるシステム」へ立て直した事例
  • 開発ベロシティ 43%向上(開発速度2倍):要件定義が間に合わずスクラムが"ただの定例会"化していた状態を、要求を精度高く言語化してエンジニアが即実装できる粒度まで整えることで高速回転させた事例
  • 遅延ゼロの開発体制へ:仕様漏れと遅延が常態化していた組織を、進捗の可視化と要件定義の承認フロー化で「当たり前のことが当たり前に進む」状態に整えた事例

より詳しい事例は、こちらもご覧ください。

内製すべきか、外注すべきか

要件定義は事業理解と技術理解の両方が求められる難しい工程です。K.S.Rogers のメンバーのアドバイスはシンプルです。

まずは、ビジネスとテクノロジーの両方が分かる人を一人置くことです。やりたいことが曖昧なままPMを採用しても、会話がかみ合いません。

その人は内部でも外部でも構いません。「今すべき方針はこれ」「進め方はこう」という指針を示し、進行中も方向が正しいかを確認できる存在が必要です。社内に経験者がいない場合は、上流に強いパートナーと伴走する形で進めるほうが、結果的に早く失敗も減ります。

要件定義でお困りなら ―― 10万円から小さく始められます

K.S.Rogers では「決まっていないところから一緒に考える」をコンセプトに、要件定義支援サービスを提供しています。悩みがまとまっていなくても大丈夫です。まずは月10万円(8時間/月・準委任)から、課題を一緒に整理するところから始められます。開発の現状把握やボトルネック特定、運用支援まで、必要に応じてプランを選べます。

企画から開発・運用まで一気通貫で任せたい場合は、スタートアップスタジオ事業でも要件定義から伴走します。

まとめ

要件定義は「機能を決める工程」ではなく「本当に必要なものを、関係者が納得して合意する工程」です。失敗の多くは、①要件定義の役割不足、②利用者の調査不足、③合意形成不足に起因します。誰の課題かを定め、要求を言語化し、コアバリューを握り、深く聞き、完成イメージで合意する ―― やらないことを決めながら進めることが、失敗を防ぐ鍵になります。

要件定義でお悩みの際は、お問い合わせよりお気軽にご相談ください。

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