FDEに最も必要なのは、AIより先に挨拶と、顧客の成功を願うことだと思うARTICLE

ARTICLE代表コラム

FDE(Forward Deployed Engineer)という言葉が、ここ1〜2年でずいぶん広まりました。顧客の現場に入り込み、課題の発見から実装までを担うエンジニアのことで、もともとは米国のデータ分析企業 Palantir が自社のエンジニアをそう呼んだのが始まりです。いまは AI の導入支援を掲げる会社の多くが「うちは FDE です」と言っています。当社の AX支援(OpeZero)も、そのひとつです。

FDE について書かれた記事や動画を見ると、書いてあることはだいたい同じです。顧客のビジネスを理解する。担当部署の仕事を理解して、KPI に落とす。それを AI でどう解くかを設計する。どれも正しいし、必要なことです。

ただ、その前に、前提が2つあると思っています。

一つ目は、元気な声で挨拶すること

FDE である以上、顧客のところへ足を運び、顔を合わせて話す機会が増えます。オンラインの打ち合わせも増えます。そのとき、最初の数秒で相手が受け取るのは、技術力ではありません。声のトーンと、目が合うかどうかです。

恥ずかしい話ですが、当社でも最近、これができていない場面が続きました。取引先から、当社のエンジニアについて「何を言っているのか分かりにくい」「自信なさそうに、暗い調子で話す」と、言葉を選びながら伝えられたことがあります。社内からも「オンラインの打ち合わせで、カメラを切ったままなのは印象がよくない」という声が出ました。代表として同席した顧客との最初の打ち合わせでも、うちのメンバーが挨拶をしなかったり、暗い声で挨拶したりするのを見て、ふだん社内で見ている姿とのギャップに驚いたことがあります。

技術の話に入る前に、相手は「この人と一緒にやれるか」を決めています。挨拶は、その最初の判断材料です。

二つ目は、顧客の成功を願うこと

もう一つは、心構えの話です。「このお客さんに成功してほしい」「このプロジェクトが、この会社の役に立ってほしい」と、本気で思っているかどうかです。

これも当社であった話です。あるプロジェクトで、メンバーが社内で顧客の愚痴を言っていました。「先方のリテラシーが低くて、話が進まない」と。気持ちは分かります。でも、それを言っている時間で考えるべきなのは、「では、このプロジェクトを成功させるにはどうすればいいか」です。相手のリテラシーが低いなら、低い前提で進め方を変えるのが FDE の仕事です。相手を評価している場合ではありません。

なぜ「その前」なのか

「顧客のビジネスを理解しろ」という話に戻ります。ビジネスを理解するには、現場の人が本当のことを話してくれないといけません。どこで困っているのか、なぜ今のやり方になっているのか、誰が反対しているのか。そういうことは、資料には書いてありません。人から聞くしかありません。

そして人は、気持ちのよい挨拶をして、自分たちの成功を願ってくれている相手にしか、本当のことを話しません。だから挨拶と心構えは、精神論ではなく、業務を理解するための前提です。ここができていないと、どれだけ優秀でも、理解のための材料が集まりません。

エンジニアは、手段が目的になりやすい

エンジニアは技術が好きです。だからこそ、意識していないと、目が技術のほうに向きます。「どの AI を使うか」「どう作るか」を考えているうちに、「この会社に何が起きたら成功なのか」が抜け落ちます。技術は手段でしかないのに、手段が目的になる。これは能力の問題ではなく、向きの問題です。

だから当社では、難しい話の前に、まずここを揃えることにしています。元気に挨拶する。顧客の成功を願う。当たり前すぎて誰も言わないことですが、FDE に最も必要なのは、AI より先に、この2つだと思っています。

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