フリーランスエンジニアの自由な働き方は、これから続かなくなると思うARTICLE
ARTICLE代表コラム
エンジニアの働き方は、ここから数年で大きく変わると思っています。なかでも、フリーランスや副業として案件を渡り歩く働き方は、かなり厳しくなるのではないか。これは統計の話ではなく、当社の周りで実際に起きていることと、そこから考えたことです。
調査の数字は「まだ増えている」と言っている
先に、公開されている調査に触れておきます。フリーランス協会の「フリーランス白書2026」を見ると、最も稼げる仕事の獲得経路は「人脈」「過去・現在の取引先」「エージェントサービス」の順です。企業側の調査もあります。BREXA SOLVIA の2026年7月の調査(自社開発企業・SIerの採用担当者519人)では、外部人材を増やす方針の企業が約7割で、理由の2位に「AI代替を見据えた人員構成の最適化」が挙がっています。
数字だけ見れば、フリーランスの需要はまだあるように読めます。ただ、この「AI代替を見据えて外部人材を増やす」という理由は、よく読むと不穏です。正社員を増やしたくないから、切りやすい外部で調整する、という意味だからです。需要は残るが、その中身は「いつでも減らせる人」に寄っていく。ここに、これから書く話の入口があります。
周りで聞く話は、数字と違う
知人のフリーランスエンジニアから、こんな話を聞きました。これまではエージェントに相談すれば半月もあれば次の案件が決まっていたのに、今はまったく決まらなくなった、と。エージェントをやっている会社の人からも、別の角度の話を聞きました。ベンチャーとの取引がなくなり、代わりに大企業や非IT企業からの依頼が増えている、と。
一例ずつなので、これで全体を語るつもりはありません。ただ、この2つの話は同じ方向を指しています。フリーランスの需要が消えているのではなく、需要のある場所が動いている。しかも、動いた先は、これまでのフリーランスの働き方と相性がよくない場所です。
ベンチャーほど、先に外部の人材を使わなくなる
フリーランスや副業のエンジニアを一番採用してきたのは、ベンチャーです。正社員を抱える余裕がなく、必要なときに必要な分だけ手を借りたい。そこにフリーランスの「案件を選んで、リモートで、自分の時間で働く」という自由さがかみ合っていました。
そのベンチャーが、いま AI駆動開発に一番早く踏み込んでいます。少人数のチームが、AI に設計とコードの大半を書かせ、レビューと判断だけを人がやる。この体制ができると、外から「手を動かす人」を借りる理由がなくなります。フリーランスが担ってきた仕事の多くは、まさにその「手を動かす部分」でした。
AI駆動開発が進んだ現場ほど、外部の人材の需要が先に消える。つまり、フリーランスにとって最大の市場だった場所から、順に仕事がなくなっていく。エージェント会社の「ベンチャーとの取引がなくなった」という話は、これが実際に起きている証拠だと思っています。
需要は非IT企業と大企業に移る。そこで求められるものは違う
一方で、非IT企業や大企業は、これから内製化に動くか、パートナーと一緒に自社でやる、という道を取っていくと思います。自社の業務を一番分かっているのは自分たちで、AI があれば、外に丸投げしなくても作れる部分が増えたからです。ただ、開発のプロがいるわけではないので、伴走する相手が要る。ここに需要が移っています。
問題は、この相手が求めるものが、これまでのフリーランスの働き方とかみ合わないことです。非IT企業の現場に入って業務を理解しようとすると、資料を読むだけでは足りません。現場の人と会って、何に困っているのか、なぜ今のやり方になっているのかを聞く必要があります。相手は「開発の人」と話すこと自体に慣れていないので、顔を合わせて信頼を作るところから始まります。
だから、面着で会えることが条件になります。時間を守ることも条件になります。リモートが一部でも、たとえば週に2日は現地に行く、という働き方が求められる。「案件を選んで、フルリモートで、自分のペースで」という自由さは、この相手には通りません。
前回の話と同じところに戻る
前回のコラム「FDEに最も必要なのは、AIより先に挨拶と、顧客の成功を願うことだと思う」で書いたことと、結局は同じところに戻ります。技術は手段でしかなく、相手が本当のことを話してくれなければ業務は理解できない。そのためには、挨拶をして、顔を合わせて、この会社に成功してほしいと思って向き合うしかない。
AI がコードを書く時代に、人に残る仕事はこの部分です。そして、この部分は、フリーランスかどうかに関係なく、現場に通える人にしかできません。
変えるべきなのは、腕ではなくスタンス
フリーランスとして働き続けたいエンジニアに、腕を上げろとは言いません。技術のキャッチアップはもちろん必要ですが、それ以上に、働き方のスタンスを変えないと仕事がなくなる、という話だと思っています。
- 面着を厭わないこと。現地に行ける距離の顧客を選び、週に何日かは通う前提で契約する
- 時間を守ること。当たり前に聞こえますが、非IT企業の現場では、これが信頼の入口です
- 単発の実装ではなく、業務の理解から運用まで、続けて付き合う前提で入ること
- AI駆動開発の道具を、自分で使いこなしておくこと。「手を動かす人」としてではなく、「AI に何をさせるかを決められる人」として入る
これまでの、案件を選んで自由に働けた時期は、エンジニアが足りなかったから成り立っていました。AI が足りない分を埋め始めた今、残るのは、相手の現場に入り、信頼で仕事が続く働き方だと思います。自由さは減りますが、仕事がなくなるよりはいい。当社も、そういう働き方ができる人と一緒にやっていきたいと思っています。